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FAQ: よくある質問と回答

設定編

Q. インストール方法を教えて下さい.
A. プロセス設計資料にある「Aspen Engineering Suite 2006 のインストールと設定 」を参照して下さい.

基礎編

Q. 物性推算式について教えて下さい.
A. HYSYS Reference Volume 1, Appendix A を読んで下さい.
Q. エラーが出なければ,正常な設計ができているのですか?
A. 例えば熱交換機について,HYSYS上では熱だけを移動させることができます.したがって,低温流体で高温流体を加熱することが,熱収支上可能になります.しかし,考えるまでもなく,これは実現不可能です.各自の常識を駆使して,必ずシミュレーション結果を検証して下さい.その他に注意すべき点としては,蒸留塔でフラッディングがおこっていないか,装置(配管)の中を流体が超音速で流れていないかなどがあります.
Q. Light key, Heavy key とは何ですか?
A. 蒸留塔やフラッシュドラムで,塔頂側流体の中の高沸限界成分がHeavy keyで,塔底側流体の中の低沸限界成分がLight keyです.
Q. HYSYSを利用した気液平衡線図の作成方法を教えて下さい.
A. プロセス設計資料にある「Equilibrium Plots Extension」を使用して下さい.
Q. HYSYSを利用した液液平衡線図の作成方法を教えて下さい.
A. 残念ながら,HYSYSに任意の温度における液液平衡線図を作成する機能があるかどうか把握していません.もし,どうしても液液平衡線図が必要であれば,デカンターを利用して液液平衡線図が作成できないか工夫して下さい.
Q. 装置ごとに物性推算式を使い分ける方法を教えて下さい.
A. 蒸留塔と反応器で異なる物性推算式を用いる場合,まず,使用する物性推算式の候補をSimulation Basis ManagerのFluid Pkgsにて作成します.このとき,Basis-1,Basis-2,Basis-3,・・・というふうに作成されます.蒸留塔については,Simulation Basis ManagerのFluid PkgsにおけるFlowsheet-Fluid Pkg Association に蒸留塔名と物性推算式(デフォルトではBasis-1)が表示されていますので,この物性推算式の部分を変更して下さい.反応器については,Simulation Basis ManagerのReactionsにおける右下のAssoc.Fluid Pkgsにて物性推算式を変更できます.
Q. 反応速度式の次数の設定方法を教えて下さい.
A. 反応速度式の次数の設定方法は,HYSYS Reference Volume 1, pp.324-325を参照して下さい.Forward and Reverse Ordersが反応速度式の次数になります.
Q. PFDの階層について教えて下さい.
A. HYSYSのPFD表示画面には,詳細度の異なる複数の階層があります.例えばPFD Case (Main)画面における蒸留塔には,フィード,留出液,缶出液流れの矢印しか表示されていませんが,その1階層下のPFD画面では,蒸留塔の還流液流れ,リボイラーからの炊き上げ蒸気流れなどが表示されます.各流れの名前は,ユーザーが設定しない限り,基本的に階層が異なっていても同一の名前が使用されます.また,詳細なPFD画面では一部の流れにデフォルトでTo_Reboilerなどの名前が与えられます.いずれの階層でも,表示されている流れを削除することができます.

単位操作編

Q. 蒸留塔の設計方法を教えて下さい.
A. UnderwoodやFenskeの式を用いて最小還流比および最小理論段数を求め,その結果をもとに蒸留塔の概略設計を行い,それから詳細シミュレーションを行って最適な運転状態を探す.これが蒸留塔の一般的な設計手順です.適当な段数と還流比を与えて試行錯誤で設計条件を求めるという方法では,これまで化学工学で学んできたことが役に立ちません.蒸留塔のショートカットモデルに関しては,HYSYS Reference Volume 1, pp.528以降を参照してください.
Q. エキスパンダーの利用方法を教えて下さい.
A. ガスの減圧にエキスパンダーを利用して,動力を得ることができます.発生した動力は対象プロセス内のコンプレッサーの動力源として利用できます.なお,エキスパンダー出口は気体でなければなりません.また,エキスパンダーの装置コストは,発生する動力と等しい動力を必要とするコンプレッサーの装置コストに等しいものとします.さらに,発生した動力を電気として売却することはできないとします.
Q. Three Phase Condenserの設定方法を教えて下さい.
A. Three Phase CondenserでChemicalを選択すると,Light Reflux, Heavy Reflux, Light Outlet, Heavy Outlet の4つの液流れができます.それぞれの流れに名前を付けるには,Column設定画面-Column Environmentを選択し,コンデンサー設定画面中の各流れ下のボックスに名前を直接入力して下さい.また,Light RefluxとHeavy RefluxのRatioを別々に与えるためには,Column SpecificationにReflux Ratioを2つ加え,lightとheavyを設定し,それぞれにRatioを与えて下さい.
Q. 電気代は考慮しなくても良いのですか?
A. コンプレッサーについては,15\/kWhとして考慮して下さい.なお,課題中に指示がある場合は,その指示に従って下さい.
Q. コンプレッサーの等エントロピー効率の設定方法を教えて下さい.
A. 等エントロピー効率は,Adiabatic efficiencyに入力して下さい.Adiabatic efficiencyとPolytropic efficiencyの違いについては,HYSYS Reference Volume 2, pp.425を参照してください.
Q. 加熱炉の設計方法を教えて下さい.
A. 加熱炉とは,耐火断熱煉瓦などで装置全体を覆い,耐熱性の高い配管を用いて管内流体を加熱する装置であるわけですが,加熱の65〜75%は輻射伝熱によるものです.ただし,HYSYSでの計算を簡単にするため,便宜上,常温のヘキサンと空気を混ぜて完全燃焼させて900℃の気体をつくり,この気体を受熱流体と接触させることにします.したがって,900℃の燃焼ガスをプロセス内の熱交換機で直接利用するというのは非現実的です.一方で,加熱したい液体を加熱炉内に送り込んで加熱するという発想に辿り着くかもしれませんが,有害な物質を加熱炉に送り込むのは避けたいところです.やはり,水を送り込んで高温のスチームを発生させ,その潜熱をプラント内各所で利用するというのが自然です.なお,加熱炉から排出される(スチーム生成後の)排ガスの熱回収を行うことは,通常行われています.

ユーティリティ編

Q. スチームの利用方法を教えて下さい.
A. 通常,スチームを利用した加熱には,その蒸発潜熱分のみを利用します.この理由は,水の蒸発潜熱と比熱を比べれば明らかです.したがって,スチームの出口温度は入口温度に等しいとします.もし,出口温度が下がるようであれば,スチームの流量を増やしてみて下さい.
Q. 冷媒を売却しても良いのですか?
A. 冷媒を燃料として売ることはできません.与えてある冷媒コストは,冷媒を循環させて再利用するために必要なコストです.したがって,売却すれば,冷媒そのものがなくなってしまいます.
Q. 人件費は考慮しなくても良いのですか?
A. 課題で特に指定されていなければ,考慮する必要はありません.
Q. 生産量がその要求量を超えた場合,過剰生産した製品は売却できますか?
A. 生産要求量を越えて生産された製品は過剰在庫となるため,その製品価値はゼロとします.

発表編

Q. 課題すべてについて発表する必要はありますか?
A. 発表会では,各グループに与えられている課題すべてについて説明する必要はありません.というより,すべての課題について述べるようなことはしないで下さい.明らかに時間の無駄です.実際には,
  1.最終的なプロセスのフロー
  2.最終的なプロセスフローに到達した理由(他のフローとの比較)
を中心に,自分たちのグループのオリジナリティーを主張して下さい.どんな問題に直面し,その問題をどのように克服したか,どんな工夫をしたかなどについて説明してもらえると良いでしょう.必死でヒートインテグレーションを考えたグループもあるでしょうし,分離シーケンスの最適化を頑張ったグループもあるでしょう.とにかく,自分たちはここを頑張った,この点に関しては誰にも負けないぞ,という部分を発表して下さい.なお,後に提出してもらうレポートでは,すべての考察項目について詳しく説明して下さい.
Q. 他グループの発表も聞くべきですか?
A. 当然です.特に,自分たちと同一のプロセスを対象としているグループの発表は,内容もわかりやすく,参考になる点や疑問に思う点などが多々あると思います.自分の発表さえ終われば後は知らないというような無責任な態度はやめましょう.遠慮せずに,積極的に質問もして下さい.
Q. スライド作成時の注意点を教えて下さい.
A. 1.PFDを示す
OHP(プロジェクターも含む)を2台利用できるわけですから,片側にPFDを示すと良いでしょう.常にPFDを示しておく必要はありませんが,プロセス全体を把握するためには,やはり必要です.なお,見辛いHYSYSのPFDをそのまま転用するようなことはやめましょう.さらに,主要な流れ中の主要物質の流量,温度,圧力をPFD中に書き込んで下さい.プロセスフローを最初に説明するときには,細かい情報は不要ですが,最終フローを示すときには,主要な流れ中の主要物質の流量,温度,圧力は不可欠です.

2.最終利益に重点を置かない
「いかに多くの利益をあげるか」ということが,本プロセス設計の最大の目的ではありません.適切なプロセスフローの選択,各装置の設計,ヒートインテグレーションも含めた最適化などが重要なのです.それらの項目について検討した内容を,具体的に発表して下さい.コスト計算について,何枚ものスライドを費やして説明するようなことは避けて下さい.

3.結果の羅列ではなく,考察した内容を発表する
「HYSYSに計算させたら,こんな結果になりました.」という発表は,ほとんど無意味です.「じゃ,君達は一体何をやったのか?」ということになってしまいます.どういう考察に基づいて,初期のプロセスフローを構築したのか.そのフローのどこが問題で,どのように問題を解決しようとしたのか.最適化するに際して,どういう根拠で,評価関数や最適化変数を選択したのか.また,どんな仮定を導入したのか.こういう部分を詳しく説明して下さい.

4.聴衆の身になってスライドを作成する
学会などに行くと,自己満足にしかなっていない発表に出会うことがあります.Powerpointのアニメーション機能を使おうと考えているグループは,よく考えて下さい.カラフルなスライドも,一歩間違えれば,見にくいだけです.
Q. 発表時の注意点を教えて下さい.
A. 1.原稿は見ないことが原則
どうしても覚えられなかったら仕方ないのですが,原稿を見ながら発表するのは邪道です.研究発表を考えると,自分で研究したことを自分の言葉で語れないというのは変です.本当にお前がやったのか?ということになります.しかも,母国語での発表にもかかわらず,原稿を見るようでは,プレゼン能力の欠如をアピールしているようなものです.厳しい言い方かもしれませんが,そんなものです.なお,原稿通りに発表する必要はありません.勘違いしている人もいますが,大切なのは,言うべき内容を言うことであって,言い回しなんかどうでも良いのです.発表がうまくなるには,練習しかありません.

2.ゆっくりと大きな声で話す
本番は緊張するので,どうしても早口になりがちです.練習の時から,ゆっくりと大きな声で話すよう,心掛けて下さい.聴衆に理解してもらえなければ,その発表は無意味です.理解してもらうためには,見易いスライドを用いて,懇切丁寧に説明するしかありません.ボソボソと呟くなんて論外です.学会発表で呟いている研究者もいますが,最悪です.

3.適切にポインターを使う
原稿を見るなと私が主張する理由の1つは,スライドを活用できなくなるからです.原稿に目がいくと,どうしてもポインターを適切に使えなくなります.原稿とスライドを同時に見ることは不可能ですから.原稿を見るにしても,見ないにしても,しっかり練習して,適切なタイミングで,適切な場所を指せるようにして下さい.たまにポインターを振り回す人を見かけますが,最悪です.

4.質問には的確に答える
質問に的確に答えることは極めて重要で,これに失敗すると,ダメな奴というレッテルを貼られます.一度貼られてしまうと,挽回は極めて困難です.人生なんて,そうそうやり直しのきくものではありません.質問されたときに,何を聞かれているのかを,質問の本質を,瞬時に理解しなくてはなりません.そのためには,発表内容を完全に理解している必要があります.結局,どれだけよく考えてプロセス設計に取り組んできたかが問われるのです.的確に答えられないということは,作業はしたかもしれないが,脳味噌は使っていなかったということです.質問に答えられなかったら,これに反論する資格はありません.これぐらいの覚悟を持って,発表に臨んで下さい.なお,質問を受けそうな内容が予測できている場合には,質問対策用のスライドを用意しておくと良いでしょう.

レポート編

Q. フォーマットについて教えて下さい.
A. プロセス設計レポートのフォーマットは特に指定していません.過去のレポートを参考にして下さい.ただし,以下の注意事項は厳守して下さい.

1. 余白
レポートは製本しますので,製本した状態でも読めるように,左側に十分な余白を設定して下さい.

2. 章と節
レポートは章と節で構成し,それぞれに通し番号を付けて下さい.

3. 図表
図および表には,必ず番号とタイトルを付けて下さい.図番号とタイトルは図の下側に,表番号とタイトルは表の上側に書いて下さい.なお,番号は,図および表のそれぞれについて通し番号として下さい.

4. 当然のこと
レポート内でフォントや文字サイズが変わったり,図表の書き方が変わったりしてはいけません.1つのレポートして完成したものでなければなりません.あまりに当然すぎて,書く必要もないようなことですが,違反者が少なくないので念のため書いておきます.
Q. 参考文献リストは必要ですか?
A. 必要です.図,表,あるいはデータなどを文献から借用した場合には,必ず参考文献を明記して下さい.反応速度式や反応速度定数を自分で実験して求めるグループはないでしょう.文献を調査して見付けてきたはずです.それにもかかわらず,レポートに文献が記載されていないのは,詐欺みたいなものです.他人の成果を他人の成果として正しく認めることができる研究者・技術者になるよう心掛けましょう.また,参考文献が書かれていないと,式やデータを信用することができません.参考にした文献は参考文献として必ずレポート中に書きましょう.
Q. 設計結果はHYSYSのPFDとWorkbookを貼り付けておけば十分ですか?
A. そんなわけはありません.HYSYSのPFDを図として利用するなら,そのPFDに示されている内容を文章で説明して下さい.HYSYSのWorkbookを表としてそのまま利用するなら,各変数の説明や,どのような条件で計算したときの結果なのかを,きちんと文章で説明して下さい.図や表を掲載するだけで全く説明をしないというのは決してしてはいけない手抜きです.レポートとしては最低レベルです.
Q. コスト計算については,結果だけ書けば十分ですか?
A. 結果だけでは無意味です.各装置の建設コストや運転コストの算出に用いた計算式を明示して下さい.
Q. その他,レポート作成時の注意点を教えて下さい.
A. まず,まともな日本語で論理的な文章を書いて下さい.提出前に徹底的に見直して下さい.

設計結果について十分に考察を加えて下さい.「こんな結果になりました」だけでは全く無意味です.知恵のある大学生のすることではありません.ちなみに,考察とは妄想のことではありません.きちんと根拠も示して下さい.

提出したレポートだけを見て,第三者が完璧に追試できる.これが優れたレポートの必要条件です.
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